2015年11月5日木曜日

古い本

部屋の片づけをしていて、久し振りに古いを手にしました。


両親には申し訳ないことに、まだ沢山の本が実家に置き去りなのですが、結婚当時持ち出した数少ない本の中に、「老人と海」がありました。この本は従兄弟からもらったように記憶しているのですが、新潮文庫で昭和41年(1966年!)に新刊として発行され、120円(!)翻訳は福田恆存(!)、手元の本は昭和48年(1973年)の23刷(!)。7年で23刷。平均で1年で3刷強。すごいな。ちなみに今回知ったのですが、英語での初版は1952年で、1954年にヘミングウェイはノーベル文学賞を受賞しています。さらにこの「老人と海」は福田恆存の翻訳作品の代表作でもありました。

まっ茶色になったコバ、紙の至るところについたシミ、これぞザ・古本というものでしょう。こんなになってもばらばらにもならず、曲げても撚ってもしなやかで、読書に耐える安心感があるのです。


久し振りに最初の数ページを読んで、あっというまに引き込まれました。

年老いてうら寂れてしまったかつての壮健な漁師と、その弟子だった成長したやさしい子供。老人と少年の会話から推察されるお互いへの気持ちや老いの切なさ、周りの人々の様子がたった数ページで見て取れます。港の潮や網の匂い、白い光、老人の硬い足裏のヒビに入り込んだ砂粒まで想像できるようです。

手に持ってページをめくるだけで読めるアナログな本という媒体はやはり良い。記されて何十年、うっかりすると何百年を経てなお、その時々の印象をもってすうっと入っていける丁寧に書きこまれた文章や素晴らしい翻訳。やっぱりブンガクっつーのはよいものだなあ、と改めて思った数分でした。


が、のんびり本を読んでいる時間などなく私はそのまま片づけを続けたのでした。



ああ、昔はなんであんなに時間があったのかな。一日は等しく二十四時間だったはずなのに。


本に耽溺したい。誰とも口をきかず、携帯も見ず、自堕落に一日だらだらと本を読む日を送りたい。


ひと月もやったら飽くだろうか。
それとも戻ってこれなくなるだろうか。


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